2012年2月22日水曜日

世界から学ぶ成功する「宅地開発」

住宅生産性研究会の戸谷英世氏は,日本の住宅産業に警鐘を鳴らし続け,「住宅購入者の将来における自己資産の維持増殖の基本を造り、家族全員の生活の安定を図る」という「消費者の利益を高める結果、住宅産業が潤う」という経営の考え方が必要だと説き続けています。


今回は,HICPMメールマガジン第444号から転載させて頂きました。
このメルマガは,下記住宅生産性研究会(HICPM)のホームページで読むことができます。
すばらしい情報がイッパイです。

家は,その土地と街と一体であり,その資産価値を高めるには,下記「三種の神器」が必要である。
1.理念のあるマスタープランと建築設計指針
2.居住者全員が強制加入する住宅地経営管理自治団体(HOA)
3.開発事業者,住宅所有者,HOAによって締結される住宅地管理基本契約約款


これを戸谷英世氏は「三種の神器」と呼んでいます。世界の成功例を見ればこの事柄は明らかだと思います。何故,日本のリゾート開発,住宅地開発はうまく行かないのでしょうか?


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HICPMメールマガジン第444号(2012年2月20日)より
セレビレーション:ウォルト・ディズニー・カンパニーが
伝統的近隣住区開発の思想 に基づき実現した
新しい住宅街

皆さんこんにちは。

NAHB・IBSとニューアーバニズムによる住宅地開発 

2月8日から15日まで全米ホームビルダー協会(NAHB)が主催するインターナショナルビルダーズショウ(IBS)と同事業の一部として2012TNAH(ザ・ニュー・アメリカン・ホーム)、NAHBコンセプト・ホームと次世代省エネルギー住宅を見学しました。その関連で米国の最先端の住宅地経営を見学するため、フロリダ州にあるニューアーバニズムの計画理論で造られた全米を代表する住宅地経営を実施しているセレブレーション、ボールドインパーク、アバロンパークを見学し、さらに、ニューアーバニズムの原点でもあるTND(伝統的近隣住区開発)を全米で最初に実施したシーサイド、そこに隣接して開発されたウォーターカラー、ローズマリービーチを見学研修してまいりました。

(1)日本と米国の住宅産業人の考え方の違い

連日、現地見学ツアー参加者全員による見学研修成果の発表と意見交換により、見聞したことを多角的に考えるようにしました。また、これまでHICPMが調査研究した成果をもとに、参加者の疑問に答える総括をし、単独旅行では吸収できなかった多くの米国の知識、技術、経験を学ぶようにしました。

住宅を単体の「もの」として、「住宅販売で住宅会社が如何に設けるか」としか見ていない日本の住宅産業の貧しい見方に対して、米国の住宅産業は、「個人の豊かな生活実現する空間」と「住宅による将来の生活の支えとなる自己資産形成」という住宅購入者の基本的な利害関係で、「如何にして自らの住宅環境を造り、販売し、経営するか」を考えています。

アメリカンドリームの基本は、住宅を取得する「将来における自己資産の維持増殖の基本を造り、家族全員の生活の安定を図る」という「消費者の利益を高める結果、住宅産業が潤う」という経営の考え方が、このツアーで理解できたはずです。

(2)リゾートハウスと定住型住宅地の共通点と相違点

特に今回の調査で興味深かったことは、リゾート住宅地経営と定住住宅地経営の連続性と、その遷移の仕方の面白さでした。もともと米国南部には、経済的自由を求めプランテーション栽培などで大きな富を獲得した人たちや、北部の産業革命による重厚長大産業や金融業で大きな富を手にした人たちのリゾート地でのホリデイハウスが開発された歴史があります。

TND開発に最初に取り組み、シーサイドのプランナーとして大きな事業を計画したDPZ(アンドレス・ドゥワーニーとエリザベス・プラター・ザイバーグ)は、マイアミに仕事の拠点を置き、米国南部にある優れたリゾート地の住宅を調査し、豊かさを感じる住宅地の計画手法を発見しました。優れた住宅地として高い評価を受けている住宅地は、基本的に非定住型のホリデイハウスやリゾート地開発から始まり、その後、人口の増加に伴い定住住宅地に変質したものでした。その共通点がTND(伝統的近隣住区開発)であり、相違点は住宅地を経営管理する手法の違いであることが分かってきました。

(3)セレブレーションの方向とボールドウィンパークの方向性

今回の調査で、米国の社会の住宅バブル崩壊後の傷跡の大きさが、住宅市場回復に依然大きな陰を落としていましたが、住宅地経営にも大きな影響を与えていました。それを象徴するものがセレブレーション開発とボールドウィン開発の違いに現れていたと思います。

セレブレーションは、ディズニー社長アイズナーの発意で、最初の居住者でも住宅地が熟成したときのアメニティが享受できる定住型住宅開発を目指していました。しかし、実際は、その住宅地の立地がディズニーのテーマパークの計画地に隣接して開発されたことから、ディズニーリゾートライフを、何時でも我が家のように利用したいと考える世界中の金持ちのセコンドライフの拠点として購入された住宅も多数ありました。このディズニー王国での勤労者の常住住宅地であることも事実ですが、非定住者が多数住宅所有するホリディ住宅地であるという性格もある住宅地です。

世界が好況のときであれば、文字通りお金にゆとりがあるセレブが集中することになります。お金持ちが絶対量として増えるわけですから、セレブレーションは大いに需給関係を反映し、価格が上昇し続けます。しかし、世界的に景気が後退している現在は需要が冷え、当初のような高い需要による支持は、勢いを失っています。

しかし、基本的なポテンシャルのある住宅地ですから、現在でも住宅の取り引きは売り手市場です。やがて、米国の景気が向上すれば、それを反映し、再び以前の盛況を迎えることは十分期待されます。

一方、ボールドウィンパークは、オランド自体の経済発展を反映し、確実に定住人口は拡大し、勤務に非常に便利な立地で、都市的豊かさのある空間ですから、所得の高い事業主、経営者、勤労者の憧れの住宅地として高い需要に支持され続けています。そこには都市の熟成という実態のある生活が息づいているため、オランドという都市圏の限られた住宅に対して増大する需要が集中するため、需給関係の良循環が継続し、その需給関係を反映し、街の活性が停まりません。

(4)計画コンセプトの重要性

シーサイド、ウォーターカラー、ローズマリービーチのいずれを取ってみても交通が不便で、大都市から飛行機を使っても、そこに到達するのは大変不便です。それであるにも拘わらず、10年前や5年前頃と比較して、いずれのリゾートコミュニテイも確実に熟成度を高めており、しっかりした社会の変動を読み込んだ住宅地経営が行われていました。この3地区だけで3、000戸程度の住宅があります。それがいずれも、しっかりとした環境を維持向上しているのは、国民のリゾート需要に対応したコミュニテイ経営が行われているからに他なりません。

日本の別荘開発がバブル開発後、衰退し、住宅が朽ち果てて行った事例が多数ある理由は、全て土地を端切れにして分譲し、そこに土地購入者が思い思いの住宅を建て来ました。お互いが恣意的にデザインを競い合い、傷つけ合った住宅を建設し、街並み景観として相殺効果しか生まれないリゾート住宅地経営になってしまい、リゾート地全体の魅力が殺がれ、アメニティも薄れ、共倒れしたのです。

それに対して、シーサイドに象徴されるように、住宅地全体が一人の住宅地経営管理協会(法人)により経営管理され、国民のリゾート需要に応えることの出来る環境管理経営がされているため、人びとが集まってきて、各住宅の経営を成り立たせたことにあります。3、000戸の住宅といえば大きな量ですが、全米の世帯数に比較すれば無視できるほどの数値でしかありません。この事実は、リゾート地としての経営管理がしっかりされていることの重要性をはっきり説明していると感じました。


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メルマガからの引用は以上ですが,
Youtubeに,「英国・ドイツの"まちづくり"ー1・田舎暮…
他全5編がアップロードされています。
やはり”まちづくり”の基本が詳細に語られています。


詳細は,本「アメリカの住宅地開発」(戸谷英世+成瀬大治著学芸出版社2,500円)に書かれています。


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