2012年12月2日日曜日

今後の日中関係について(その5)


2012年10月18日配信 

 (中国のバブル崩壊についての読者からのご意見。) 

 前回、今後の日中関係について(その4)(私の周辺でもささやかれる中国の経済鈍化の足音。経営難に苦しむ鉄鋼商社)の情報に関し、みらいコンサルティングの星野海外顧問より以下のご意見が寄せられました。参考になりますので、ご本人のご了解を得た上で紹介させていただきます。 

(星野様からのコメント)
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 中国の今の現象は、バブル崩壊ではありません。大きな右肩上がりの成長の調整局面と、当方は考えています。中国経済全般から見たら、良くある経済のBUMPY ROAD現象です。問題は、現地日系企業が、二国間の政治闘争に巻き込まれていることです。これは短期間に解決できないと思いますので、これを踏まえた経営戦略が日系企業には必要となっています。 
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 確かに、日本のバブル崩壊とは経済の発展状況が違うと思います。日本はあの時すでに都市化の進展が70%を超えておりました。それ以上の発展の余地がない時点でのバブルの崩壊でした。都市と農村の所得格差が縮まり、農村から都市部への人口の流入による高度成長がすでに止まってずいぶん経ってからのことですね。 

 それに対し、中国は、都市化の進展がまだまだ今年の発表でやっと50%を超えた段階。農村と都市の所得格差もまだまだ開きがある状況です。従って、今回の鉄鋼企業の破綻があったとしても、それがすなわち中国全土のバブルの崩壊ということではないのかもしれませんね。

 一方で心配されているのは、地方政府及び関連国営企業の債務の問題ですよね。成長の余力があっても、外部から見て正確な数字が把握できない地方政府の債務のリスクが表面化したら大変なことになるのではないかという懸念が欧米のエコノミストからも指摘されていますね。この点も合わせてみてゆく必要があるのだと思います。

 中国の日系企業が二国間の政治闘争に巻き込まれていることは忌々しき問題です。今の状況を単なるリスクととらえるか、チャンスととらえるか意見が分かれると思います。あるお客様から、「直感的にチャンスと思えるのだけど、理路整然と整理できていないので、高田さん、まとめてみてくれない。」というご意見、ご要望を頂きましたので、少々時間を掛けて整理してみたいと思います。請うご期待です。

 以前お送りいたしました、今後の日中関係について(その1)を中国語に翻訳いたしました。私の中国人の友人に送りましたところ面白い意見が寄せられておりますので、別途整理してお送りいたしますので、お楽しみに。中文版ご入用の方はお知らせ頂ければお送りいたしますので、ご連絡ください。 

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今後の日中関係について(その4)


2012年10月15日配信 

(私の周辺でもささやかれる中国の経済鈍化の足音。経営難に苦しむ鉄鋼商社) 

国慶節の休暇も終わり、早一週間、上海では何事もなかったかのように普段の生活に戻っております。 
 本日はお客様の中国企業の買収交渉でこれから江蘇省に行ってきます。 
 昨日午後、中国人コンサルタントの友人と雑談していて気になる情報を耳にしました。 
 中国の鋼材商社から破産の為のプランニングの相談を受けているそうです。 

 状況は以下の通りです。 
1.不動産市場の低迷などで鋼材の売り行きが落ち込み、中国の鉄鋼商社が経営難に苦しんでいる。

2.数百億円のクラスの売り上げを誇る鉄鋼商社が何社もあるが、売上減と鋼材価格の下落の二重苦に苦しんでいる。 

3.もともとこの業界者景気がよかったので、在庫の鋼材を担保に銀行から多額の借り入れをして以下の各方面に投資していた。 
(1) 不動産投資。 
(2) 同業者に対する資本参加、買収。 
(3) PE投資。 

4.しかしながら、最近の景気悪化ですべてが裏目に出て、銀行も大きく担保割れの状態に陥っている。 

5.中には、一つの鋼材在庫を複数の銀行に重複して担保に出していた例もあり、破産したら銀行も大きな損害を受けるであろうとのこと。 

6.破産手続きとなると、裁判所が介入してくるわけであるが、そこで、不法行為が見つかった場合、会社の経営者も大変な事になるのではないかと質問しましたら、以下の回答がありました。
 「この会社は政府の背景のある会社なので、最終的に経営陣の責任追及はされないのではないか。」(私の個人的な見解としては、権力闘争が絡めばだれかが責任取れされるとは思いますが。) 

7.この会社、財務管理がぐちゃぐちゃなので、彼の仕事は、まずは、財務内容を整理整頓するところから始めるとのこと。 

 本メールを読んでおられる読者には、日本の鉄鋼系商社の方もおられますので、中国企業向けの売掛がある場合は十分注意ください。 
 本件は、局部的な情報ではありますが、今後類似の情報がありましたら、皆さま方からも是非情報提供頂ければ幸いです。 

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